2020/06/07
循環する通貨 社会経済

通貨総量の増加がもたらす経済格差拡大と金融膨張


100年に一度と言われる経済停滞のなかで今、お金を配って回収する「循環する通貨」~持続可能なベーシックインカム~がなぜ必要か。配りっぱなしだと通貨総量が際限なく増加するから。そうすると、その増加したお金は金持ちに行き着き、金持ちが金融商品に投機して、金融商品の材料となる借金の債権の需要が増え、それが中低所得層へのさらなる借金奨励につながり、貧乏人をさらに貧乏にするからです。

🔮 財政赤字で通貨の総量は増加する

政府が国債による借金で経済支援策を実施すると、そのお金は新しく発行されたお金なので、世の中へ出て行って通貨の総量を増やします。
下記の左図は日本国内の通貨総量とM3と、GDPを比較した図です(こちらの論文から引用)。GDPが横ばいなのに、通貨総量が増え続けていることがわかります。


通貨を1回でも使えばGDPはその分だけ増えるので、通貨総量とGDPの大きな差は、日本では1年間に一度も使われていない通貨が大量にあることを意味しています。一度も使われない通貨、つまり預金口座にただ溜め込まれ、ずっと滞留・沈殿している通貨です。上記の右図はその沈殿する通貨の推移です。ここ数十年で激増し、最近では900兆円にのぼっています。GDPを遙かに超える量のお金が、1年に一度も使われずに眠っているのです。。


🔮 日本では増加した通貨は預金口座に沈殿する

日本では、政府が赤字国債で予算執行すると、民間に支出されたそのお金は、回りまわって富裕層の預金口座にたどりついて沈殿するということです。平成の30年間ずっと起きていたことです。だから個人の金融資産が年々増え続けてる。現状ではそのお金が中低所得層に戻ってくることはほとんど無いし、政府に戻ることもほとんどない。。そういう仕組みがないのです。今回の緊急経済対策数十兆円も国債でまかなわれるので、日本の通貨総量がそれだけ増えて、金持ちのところに行きついて沈殿する可能性が高いです。だから、循環する通貨が必要なのです。金持ちに沈殿する通貨が中低所得層に戻ってくる仕組みが必要なのですよ。


🔮 預金が増え過ぎると銀行が困る

日本では、預金が増えすぎると銀行が困ります。いま銀行は預金を保全するために膨大なコストを担っています。銀行はいまや、大容量サーバーなどを大量に保有する装置産業であり、預金という電子通貨の移動および保管の利便性を図るIT産業であり、サイバー空間で顧客の通貨を守るセキュリティ産業でもあり。。多くの設備・システムなどが必要になった結果、預金のコストは激増です。銀行は、預金者の預金を保護するために、わざわざ保険にも入ってくれてもいるのですって!ここ数十年で一気にインターネットが広がり、地球の裏側からも不正アクセスされるようになってしまったのですものね。。


🔮 米国では増加した通貨は投機に回る

日本の富裕層は現預金をそのまま沈殿させているのに対し、米国では大半が投機に回されます。米国の問題は、通貨量が増加すればするほど、投機に投じられる通貨が増え、これによって実体経済から搾取される金額が増加することです。コトラーさんという人が、米国の所得上位5%の富裕層が得る所得の大半が運用に回り、実際の消費経済にほとんど回っていないことを指摘しています(フィリップ・コトラー 著『資本主義に未来はある』)。


🔮 金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に

投機が増えると金融商品の需要が増え、そうすると金融商品の元となる借金の債権の需要が増えます。中低所得層に借金させて債権を作り、その債権を束ねて金融商品を作るのです。米国では株主資本主義の下で賃金が抑制されている労働者層に対し、カードローンや学費ローンのような借金が奨励されています。たとえば学費ローンはいまや総額160兆円を超え、大きな社会問題となっています。借金者が増え、貧乏人がより貧乏になる一方、その借金の債権を元にした金融商品が増え、金持ちはより金持ちになります。


🔮 通貨総量拡大は低所得層をさらに窮乏化する

金融商品はいまや世界のGDPの総額8000兆円の10倍を遙かに超える10京円に上るそうです(こちら)。こうして米国では経済格差がどんどん拡大して行っています。モリスさんという人によれば、金融商品は実体経済のGDPに対する請求権だそうです(チャールス・R・モリス著『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物』)。つまり、今後10年分以上のGDPに既に請求権が設定されているということです。自分たちは何も働いてないのに金持ちだからって、実体経済から搾取できる仕組みができあがってるんですよ。前出のコトラーさんはこれを、「金融部門の役割は、『経済の残りの部門からカネを搾り取る自立した永久機関』になった」と表現していました。通貨総量が拡大すると、増えたお金は富裕層に行って、金融を膨張させるってことです。


🔮 「循環する通貨」~持続可能なベーシックインカムを今こそ!

日本での問題は、最近、米国に倣って金融商品の扱いが増えていることです。日本の銀行は世界では珍しく真面目で正直だったのに、預金が増えすぎて経営が苦しくなっています。そうなると、背に腹は代えられず、米国のように虚業で実体経済を搾取する方向に向かってしまう恐れがあります。
このように、経済支援のためのお金は、たとえ最初は中低所得層に配られたとしても、彼らが一度使ってしまえば、一直線に金持ちのところへ向かいます。そこからは戻ってきません。通貨が増えると、金持ちがより金持ちになるだけでなく、貧乏人がより貧乏になり、経済格差が拡大する。だから、通貨に循環の仕組みが必須なのです。今こそ、「循環する通貨」を用いたベーシックインカムを実施するときです。


※詳細はこちらの論文を参照ください。


湧志創造